【レポート】「ブラッセルから見た欧州連合の内幕~その組織的実態と展望」開催

欧州連合と加盟国の関係性について

次に、「欧州連合と加盟国の関係」というテーマでお話いただきました。
「欧州連合は、各国のトップと欧州委員会委員長、常任議長からなる最高意思決定機関である欧州理事会、そして欧州市民の投票によって任命される議員で構成される欧州議会が意思決定機関として存在します。そして、その政策を遂行するのが各国から1名ずつ選出される委員で構成される欧州委員会であり、省庁と同じように政策分野ごとに作業部会を設け、行政の遂行にあたっています」とシンプルな語り口で説明。
「欧州連合と加盟国は、3つの関係があります。

1、通商、農業分野に関しては、欧州連合が法制化し排他的権限として外国と条約を結ぶ
2、環境、科学の分野は、欧州連合と加盟国の分有として、各国と欧州連合が綱引き
3、文化、産業、教育分野は、加盟国が決定し、欧州連合は支援、調整を行う」と制度に関する説明を述べられました。
「また、欧州連合の三権分立に関してですが、立法は、欧州委員会が法案を準備し、欧州理事会が決定しますが、外交・安全保障に関しては、政府間協議によって全会一致で決定します。また、行政は、欧州委員会が執行し、司法は欧州連合司法裁判所が行います」と欧州連合について知識のない方でもわかるよう、制度面も詳しく述べられました。

欧州連合の仕組みや法整備についての講演を真剣に聞く参加者の方々。

欧州連合の仕組みや法整備についての講演を真剣に聞く参加者の方々。

「ただ、欧州連合は様々なテーマを検討して制度化しますが、個々のルールを作るために最短で半年、なかには2年かかるものもあります。つねに30以上の会議が並行して行われており、法制化のための法律案を審議するのにだいたい2年かかります」と欧州連合ならではの問題も指摘。
さらに、「議長国は半年ごとに交代し、現在はエストニアが行っています。古参加盟国、新加盟国、小国をうまく調整。議長になれてもらうために、3つの議長団をうまく組み合わせます。たとえば、フランスは人口約7000万人、マルタは35万人ですから、マルタが議長を行うときは、古参国がフォローします」となかなか報道されない内幕にも言及されました。