【レポート】講演討論会「アベノミクスと日本経済〜フランス日刊紙特派員の診断」開催

イベントレポート

アベノミクスの3本の矢の目的とは

「2012年12月にスタートした安倍政権は、翌年1月アベノミクスを発表、3つの矢にたとえた3段階の経済政策を行ってきました。それが、日本経済のソリューションとなるのか、この改革は果たして本当に必要な政策なのかどうかを考えたい」とルソーさんは語り、アベノミクスの目的について語り始めました。

まずは、3本の矢の1本目である「財政出動」について。財政出動は、予算を投じて橋や道路を建設したり、東北の復興事業に予算を投じて景気を刺激することです。これは、世界の先進国同様、日本の歴代政権も行ってきました。市中にお金を行き渡らせて企業や個人にお金が流れるようにし、景気を回復へと向かわせるためで、2013年初頭に行われた最初の財政出動は10兆円規模、消費税増税直前には5.5兆規模と、立て続けに行われました。

「アベノミクスの3本の矢には、それぞれメリット、デメリットがある」とルソー氏

「アベノミクスの3本の矢には、それぞれメリット、デメリットがある」とルソー氏

2本目の矢は「金融政策」。よく新聞で量的緩和という言葉で言われますが、日銀の黒田総裁が就任後行ったのは、低い利率を維持すること、そして毎月の国債を約7兆円、つまり発行残高の約70%を日銀が買い占め、銀行が手軽に利益を得られる国債を購入できなくすることにより、銀行が企業や個人への融資をもっと積極的に行うよう仕向けました。

日銀は、市中にお金が溢れることで、貨幣価値を下げ、円安を誘発し、物価上昇に向かわせることで、デフレを脱却することを目的としました。また、円安は、製品価格を安く輸出できることで、輸出企業の収益を高めることもその目的でした。

3本目の矢は、「構造改革」です。歴代の内閣同様、安倍政権も構造改革を唱え、日本市場を解放するためにTPP(環太平洋経済連携協定)やEUとのFTA(自由貿易協定)の締結を目指しています。また税制改革、農業分野の改革をするために全国農業協同組合中央会(JA全中)と対決する姿勢を示しています。また、ウーマノミックスという、女性の労働市場への進出を後押しする政策も行っています。