イベントレポート 第61回Rendez-vous Franco-Japonais 開催「フランスは2014年の世界情勢をどう見ているか」

多極化する世界情勢の中での日仏の立ち位置とは?

その後は、磯村パリクラブ名誉会長との対談形式で、世界情勢などについてマセ大使のご意見を伺いました。

磯村氏の質問に答える形で進む対談。時にユーモアあふれる会話に会場も和んだ雰囲気に。

磯村氏の質問に答える形で進む対談。時にユーモアあふれる会話に会場も和んだ雰囲気に。

まず磯村氏は、「日仏の首脳会談において、これまでは経済問題が主であり戦略的問題について話し合うことはなかったが、昨年のオランド大統領と安倍首相の会談は画期的であった」と評価。その上で「日仏間の戦略的対話を考える際、中国、アメリカを念頭に置く必要があるが、なにかアドバイスを」と。マセ大使は、「今はグローバル化が進み多極化した世界情勢。どこか一つの国だけを意識するのではなく状況に応じて多くの国と交流を深めることが必要。フランスはアメリカも重要。それはアフリカ諸国、ウクライナ、シリアなども同様で、さまざまな国と交流している。日仏関係においては、長い歴史もありすべての分野においてパートナーシップができている」と話されました。

また、「日仏会館90周年で多くの文化的行事が予定されているが、将来への問題は?」
との質問に対しては、「6月28、29日には日仏会館で日仏文化サミットも開かれる予定で90周年記念行事はとても重要。日仏間ではとても良い文化交流ができていると思うが、若い世代の方にもっと関心を持ってほしい。またフランス語を学ぼうとする人が少ないよう。最近は少し改善されているが、フランス語は世界で最も多く話されている言語の一つなので、コミュニケーションツールとして大切」と話されました。さらに、『ユネスコにおける文化の多様性条約』に日本が批准していないことが大変残念であると指摘。ヨーロッパではこの条約に批准していない国には、文化協力ができないという宣言があるとのことでした。

続いて世界経済について。磯村氏は、「この2年間、世界経済は先進国の経済進展によって回復基調になっているが、個人的にどう思われるか。また、中国は習近平主席の訪仏時、フランスに対して50件、総額180億ユーロに上る商談を成立させた。その条件として中国での現地生産が挙げられているが、技術移転などの心配はないか?」と質問。対してマセ大使は「2014年は先進国の経済成長がプラスに転じた特別な年になる。ユーロ危機は過去のものとなり、ユーロ圏に対する信頼が戻ってきている」と回答。また、「中国は日本と同様に重要な国であり、中国に進出する際はそれなりのリスクに留意して現地生産の重要性を理解することが大切」と説明されました。

フロアからの質問にも丁寧に回答

その後は、フロアからの質問も受け付け、マセ大使は一つ一つの質問に丁寧に答えてくださいました。

「今年は第一次大戦勃発100年だが、今の東アジアやウクライナ情勢に関して、フランスの教訓は?」という質問に対しては「第一次大戦は相手国に対して憎しみを生じさせたが、第二次大戦によって憎しみではなく和解することが重要であると自覚した」と話されました。また、「中国が外国のメディアを使って日本のナショナリズムの台頭について批判していることについて主要国の大使としてどう見えるか?」との質問については、「これは難しい質問。ナショナリズムという言葉にどんな意味を持たせるかによって異なってくる。軍国主義と捉えれば、日本のGDPにおける防衛費の増加も格別に見られないので、それはあたらない。愛国主義と捉えれば、それはどこの国でもある。日本のとる行動はなかなか真意が伝わらないことが多いので、意識して世界に説明していく必要があるのではないか」と指摘されました。さらに、地球環境問題に関する日仏協力事業の今後の展開について質問されると、マセ大使は、「日本のJICAとともにインドネシアでは森林火災を防ぐための森林管理を実施しており、今後ベトナムでも同様に実施する予定。さらにケニアでは地熱開発を日仏共同で開発している」と話されました。

 マセ大使には、挑発的な質問や答えにくい質問にも快くお答えいただき、その真摯な姿に感銘を受けた方も多かったようです。最後は、参加者全員スタンディングオベーションでマセ大使をお見送りして、講演会は終了しました。