イベントレポート 日仏会館・日独協会 共催シンポジウム 「日仏独における子育ての支援 ―それが少子化問題に与える影響」

世界でもまれにみる高齢化社会に突進する日本定塚由美子さん

本日のテーマの対策を担当されていらっしゃる、厚生労働省雇用均等・児童家庭局総務課長の定塚由美子さん。東京大学法学部卒業後、労働省入省。米国労働省における半年間の研修、2004年内閣府男女共同参画局推進課長を経て現職に。共著に「ワーク・ライフ・バランスー仕事と子育ての両立支援」、「家族のための総合政策(2)」などがある。

本日のテーマの対策を担当されていらっしゃる、厚生労働省雇用均等・児童家庭局総務課長の定塚由美子さん。東京大学法学部卒業後、労働省入省。米国労働省における半年間の研修、2004年内閣府男女共同参画局推進課長を経て現職に。共著に「ワーク・ライフ・バランスー仕事と子育ての両立支援」、「家族のための総合政策(2)」などがある。

1966年の丙午の年の低出生率をさらに下回ってしまった、2005年の1.26という数字は、日本の少子化の問題の深刻さを大きく反映したものです。「平成元年には、1.57ショックという打撃があり、ついに政府もあらゆる対策をたて多少は回復しつつあります」と定塚さん。しかし、いまだ先進国の中では、ドイツ、日本をふくめ少子化の傾向は、払拭できない大きな社会問題。それに加え長寿国日本では、高齢者層がどんどんふくれあがり、2050年には人口のおおよそ4割近くを占めると予測され、世界でもまれにみる超高齢化社会がジリジリと迫ってきています。それにしても、なぜこんなに出生率が下がるのでしょう?「けっして子どもをほしくないわけではないんです」と、定塚さん。実際に独身の9割の人たちは、結婚の願望があるという調査結果がでています。ただ非正規雇用の割合が非常に高いなど、経済的理由が主として結婚への高い壁となって立ちはだかっているのです。
さらに運よく結婚したとしても、晩婚化によって必然的に産む子どもの数が減っていることも、少子化現象を引き起こす一因です。フランスやドイツとの大きな違いである、『結婚してから産む』という日本風の考え方も、晩婚化傾向と相まって、さらなる出生率低下をひきおこすことに。そして産んだとしても、育児に対する夫の協力が得られず子育ての苦労を経験してしまうと、二人目がほしいという気持ちになれないことも少子化に拍車をかける要因です。子育て期にある30代の日本の男性たちの5人に一人は、1日あたりおよそ4時間も残業をしているという統計もあり、これではなかなか育児参加が叶わないのも現状です。定塚さんは「父親の育児参加を妨げている”働き方の改革”が急務です」と提言します。

子育てしながらの日本女性の就業の難しさ

さまざまな資料データーをもとに、少子化の現状を説明する定塚さん。

さまざまな資料データーをもとに、少子化の現状を説明する定塚さん。

日本では、出産を機に育児休暇をとるのではなく離職する女性が6割にも及び、他国と比べてもかなり高い割合を示しています。この数字が表しているのは、日本における子育てしながらの就業の難しさ。子育てに対する経済的、心理的負担や、就業継続と出産・育児の両立の困難さが子どもを持つことをためらう理由のひとつともいえます。その背景には、個人や家族の生活よりも企業を優先する企業風土があるともいわれています。「女性の子育てや就業に対する支援が充実しているかいなかによって、出生率が回復している国とそうでない国に分かれる」と、定塚さん。また、”母親への責任の重圧があると、出生率が低い”という見解もあるそうです。しかしその反面、日本では女性が活躍する企業は収益があがっているという報告もあり、企業から支援をもらう政策も検討されるようになるだろうといわれています。そして平成27年からは、新しい国の子育て支援取り組みが予定されており政策は進んでいるそう。「統計の予測が現実とならないように、国の取り組みそして私たち個々においての意識改革にぜひ期待したい」と定塚さん。