イベントレポート 日仏会館・日独協会 共催シンポジウム 「日仏独における子育ての支援 ―それが少子化問題に与える影響」

日本人から見た、ドイツと日本の結婚観の違い川口マーン惠美さん

在独30年の、作家の川口マーン惠美さん。日本大学芸術学部音楽家卒業後、1985年ドイツ、シュトゥットガルト国立音楽大学大学院ピアノ科修了。著書に、「母親に向かない人の子育て術」(徳間書店)や、15万部のベストセラーとなった「住んでみたドイツ 8勝2敗で日本の勝ち」(講談社プラスアルファ新書)など多数。

在独30年の、作家の川口マーン惠美さん。日本大学芸術学部音楽家卒業後、1985年ドイツ、シュトゥットガルト国立音楽大学大学院ピアノ科修了。著書に、「母親に向かない人の子育て術」(徳間書店)や、15万部のベストセラーとなった「住んでみたドイツ 8勝2敗で日本の勝ち」(講談社プラスアルファ新書)など多数。

ドイツに暮らして30年という川口さんは、3人のお子さんをドイツで出産、子育ても経験なさいました。「異国ゆえに楽しいことばかりではなく大変なこともあったけど子育ては素晴らしい!」と笑顔で話します。ドイツでは、まず結婚に対する意味合いがまるで違うことに直面したそうです。「ドイツはお互い好きになれば、結婚という形をとらずに一緒に暮らし始めるのが当たり前です。日本だとこれはいまだに”性のみだれ”と捉えられがちですが、ドイツではごく自然の男女の流れなのです」。これはフランスの”婚外結婚”と同じカップルのスタイルともいえるかもしれません。
籍を入れていなくても、カップルとしてまわりにも認められているため、公の場所にもこぞって同伴します。離婚の手続きが日本よりも煩わしい点も、少し影響するかもしれませんが、こういう籍をいれていないカップルが大半だそうです。籍を入れるのは子どもができてから考え始めるというのも、フランスの”婚外結婚”と似ています。日本のように結婚が大きな意味を持つのは、ドイツではごく限られた貴族や旧家のみ。結婚相手も、ヨーロッパの貴族から選ばなければいけないという厳しい家訓が残っています。

休暇を楽しみすぎて少子化に?

「日本では、自立して自分の生計をたてていくという考えが育っていない印象ですが、ドイツでは女性も働くことは大前提」と川口さん。ドイツ人から見ると、受験戦争を勝ちぬいていい大学まで卒業したのに、その後はパートでいいとか、専業主婦でいいとかという日本の女性たちの考はなかなか理解しにくいそう。「ドイツでは大学卒業後、何もしないで家にいたりパートタイムで働いていたりすると、周囲からは能力がない、不運だとか言われたり、病気ではないかとか心配されかねない。男性たちも、パートナーに家にいて自分の面倒みてくださいなんて言おうものなら、相手に殴られかねない(笑)。そんな願望は皆無に等しい。時として、日本の専業主婦はぜいたくな存在と思われがちですが、こんな感覚のドイツに暮らしているとなかなかそうは思えなくなってくる」と川口さん。ドイツには、子どもができる前には少なくとも専業主婦の選択肢はなく、ごく稀に何人か子どもができた後も復職せずに専業主婦になるという人がいる程度だそう。
ドイツでは、子育てしながら働く女性たちへの支援は手厚く、経済的サポートも整っています。しかし、フランスと比べると少子化なのはなぜなのでしょう?「ドイツ人の休暇への執着が一因なのかもしれません」と、川口さんならではのユニークな分析。日本人だとまとまった休みがとれたら、病院へ治療に通うとか、親の介護とか普段できないことをまずこなすことに費やします。しかしドイツ人たちは、休暇の文字通り『休暇は休むもの』。普段行けない場所に行って、できない経験を楽しみ、心身ともに満喫する。そして休暇が終わると、すぐに次の休暇の計画をたてる。残念ながら、その休暇の中には子づくりという選択があまり取り入れられず、結果、少子化になっているのではないかかと分析します。逆をいえば、「日本人に休暇は存分に楽しむだけのものという感覚がそんなにないのであれば、子どもを持つことに障害はあまりないのでは?法制と経済的援助が整えば、日本では必ず子どもは増えるはず!」と、川口さんは提言します。