講演会「フランソワ・オランド大統領の経済政策の評価と展望」~オランディズムとは何か~

【ご報告】

Jean-Pierre Robinかなりの雨模様にも関わらず虎の門の日本財団ホールの1階に約50人の参加があった。定刻通りにはじまりロバン氏の熱のこもった逐語通訳付きの講演は6時半 から8時まで続いた。その後、参加者4人より、1)フランスの対日経済関係、2)フランスの経済モデル、3)フランスのアイデンティティ、4)現政権の功罪 について質問があった。これに対しロバン氏より丁寧な回答がなされた。

2012年5月6日日に僅差で選ばられたフランソワ大統領は、サルコジ-大統領と大きくかじ取りを違えることは現実的でなかった。この1年だけの結果でなく、70年代までの問題、99年1月1日よりの欧州統合がからんでいる。

1)現状

人口は出生率高く2030-50年にドイツの人口を上回る。GDPは過去20年間に0.9%、ここ10年間で0.6%。失業率は10%台で80年代より7%を下回ったことない。貿易赤字2012年は670億ユーロ、2001~2年の中国のWTO加盟とユーロ発足で競争激化。財政赤字はGDPの4.6%で債務は90%超える。財政支出はGDPの57%でOECD平均より高く北欧並み。社会保障は賦課方式、家族手当やドイツの3倍の失業手当など充実。現在の危機を世界経済危機に原因を求めるのは間違っている。現在は戦後でも経験のない事態。

2)経済政策

選挙公約60のプログラム。①年間100万ユーロ以上所得者に75%課税。憲法院が違憲判決。カウザック予算相は「この課税は税制というより社会政策」と。困難な時期に富裕者が連帯を示すとき。エロー首相「英国の30年代に90%」と。②定年の60才へ部分的逆戻り。③最低賃金Smicの0.6%引上げで500万人以上の人。OECDのGuerra事務総長は「高水準のSmicが若者を雇用から遠ざけている」と。④残業手当の非課税。企業の労働政策に柔軟性を与えた。3つの挑戦。(1)財政 減速経済下でどう財政再建するか。悪循環の危機。予測GDP政府0.8%、OECDは0.1%に下方修正。公的赤字は3.5%に上昇。大企業と富裕層に課税。」エロ首相の「正義の格差是正回復」と。富裕層の海外逃避。2013年は200億ユーロの増税と100億の支出削減。公的債務膨張、GDPの91%へ。Rogoff1の危険な水準突破。(2)競争力 伝統左翼から大転換か。需要主導の社会主義から生産供給型の社会主義へ。オランド大統領「衰退は我々の運命でない」と。必要性は、貿易赤字、失業、空洞化。フランスは競争力ショックが必要と。目標は潜在成長率を0.5%引き上げ、17年までに30万人雇用。投資予算200億ユーロ投入。(3)雇用 構造的失業は30年来。①労働コストの高さ ②労働市場の硬直性 労使間にドイツのように「社会的コンセンサス」ない。③失業 人材訓練のなさ オランドの回答は、①6万人の教員採用 ②Contrat de generation 30歳以前の若者と55才以上のシニア採用で税特典 ③Emloi d’avenir ④1月11日に労働市場改革合意。

3)成果

「失業率、1年後に反転」と。人口年20万増加で9万5千ポスト切る。支持率30%切る。

4)展望

欧州中銀いよるとコストがドイツより15~20%高い。P.アルチュスも「40年間の失政」と。オランドはフランスのシュレーダーになれるか。

 

【イベント概要】

Jean-Pierre Robinフランスのオランド大統領は就任前より選挙公約やマニフェストで緊縮色一辺倒の経済政策を成長・雇用重視の路線に転換すると表明。2013年財政法は300億ユーロの「財政ショック」と形容される財政縮小によって2013年に財政赤字をGDP4.5%から3%に縮小するという内容が明らかにされた。増税依存の歳入重視型の財政再建策である。緊縮と成長・雇用が併存した一見、矛盾した政策運営の舵取りにつきオランド大統領は2013年末に向けての財政赤字幅対GDP3%達成こそが市場からの攻撃を当面守り、ユーロ圏経済の安定に直結すると考えている。初年度の予算では企業と高所得層に対する課税の強化が全面に出ている。国際競争力強化につきエロー内閣はガロワ報告の20の提案を受け8大政策と35の具体措置を盛った「成長と競争力と雇用のための協約」を発表。1月に労働市場の柔軟化に向けた「歴史的な」合意が成立。ユーロ危機下の景気後退、格付け機関の評価、独仏等との確執など不協和音の絶えぬ状況と展望をフランス人経済論評ジャーナリストとして著名なロバン氏に解説していただく。

日時 2013年4月2日(火)18:30~
場所 東京虎の門・日本財団1階ホール
主催 パリクラブ(日仏経済交流会)
共催 笹川日仏財団 日仏会館
後援 ジェトロ(日本貿易振興機構)
講演者 ジャン・ピエール・ロバン ル・フィガロ経済編集長
通訳 臼井久代
司会 伊藤朋子
使用言語 日仏(逐語通訳)
定員 100名
お申込み締切 2013年3月31日18:30まで
お問い合わせ先 予約確認のメールが届かない場合や、イベントに関してご不明な点がございましたら、下記メールアドレスまでお問い合わせください。
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