「ワインの夕べ」――パネルディスカッション+ワイン+ピカソ展

日仏経済交流協会(パリクラブ)主催
在日フランス商工会議所(CCIFJ)共催

日仏交流150周年 QRコード長くワインの世界に係わってこられたスピーカーから、歴史を振り返りながら技術・ビジネス・文化の話を伺いました。これであなたもワイン通です。レセプショ ンでは、協賛の各社(アサヒビール(株)、サントリー(株)、(株)西岡寅太郎商店、メルシャン(株)、(株)横浜君嶋屋)より、スピーカーのお話しに因 んだシャンパンとワインのご提供を頂き、試飲を行いました。

■パネルディスカッション『ワインを巡る日仏交流』

笹川日仏財団助成「日仏経済関係150年―回顧と展望」行事
130年前からはじまったワイン交流/仏シャトー買収、ワインビジネス/日本のワイン市場/シャンパンを飲む文化/フランスワイン産業の話等

日時 2008年10月14日(火) 17:00~20:30
プログラム 16:30 ~ 受付 美術館3階
17:00 ~18:30 パネルディスカッション 美術館6階ホール
18:30 ~19:15 ピカソ展観賞 (当日は休館日ですが、特別鑑賞会を企画)
19:15 ~20:30 レセプション (美術館6階ホール)
パネリスト
  • 小阪田嘉昭氏 (パリクラブ理事、メルシャン技術顧問)
  • 永田靖一氏 (サントリー取締役 酒類カンパニー副社長)
  • 上口尚史氏 (アサヒビール 酒類本部担当部長)
  • 川村玲子氏 (シャンパーニュ地方ワイン生産同業委員会日本事務局代表)
司会 三浦一雄氏 (パリクラブ理事、西岡寅太郎商店 副社長)
場所 東京ミッドタウン・ガレリア内 サントリー美術館
港区赤坂9-7-4
http://www.suntory.co.jp/sma/inquiry/index.html
使用言語 日本語。同時通訳は不在でしたが、パネリストはいずれもフランコフォン。

※この「ワインの夕べ」については在日フランス商工会議所のサイトのLa Lettre Mensuelleでも紹介されていますので、あわせてご覧ください。
http://www.lalettremensuelle.fr/spip.php?article2778&lang=ja

■ご報告

左から:永田氏、小阪田理事、三浦理事、川村氏、上口氏、久米会長代行、若林氏(サントリー美術館副館長)

左から:永田氏、小阪田理事、三浦理事、川村氏、上口氏、久米会長代行、若林氏(サントリー美術館副館長)


左から:永田氏、小阪田理事、三浦理事、川村氏、上口氏、久米会長代行、若林氏(サントリー美術館副館長)

2008年10月14日、東京ミッドタウンにあるサントリー美術館ホールに於いて、日仏経済交流会(パリクラブ)主催、在日フランス商工会議所 (CCIFJ)共催による「ワインの夕べ」が開催された。今年は日仏修好150周年の年に当たり、笹川日仏財団の助成を受けた「日仏経済関係150年―回 顧と展望」の一環として行なわれた行事である。パネルディスカッション「ワインを巡る日仏交流」、ピカソ展観賞、レセプションと3部構成の盛りだくさんの 「ワインの夕べ」であった。参加者はパリクラブ、CCIFJの会員の他、協賛ワイン会社からのご招待者など、110名近い人数であった。

パネルディスカッション「ワインを巡る日仏交流」は17時からはじまり、冒頭、久米五郎太パリクラブ会長代行から開会の挨拶があり、続いて三浦一雄氏の司会によりパネルディスカッションに入った。当日のパネリストは次の方々であった。

  • 三浦一雄氏 (司会、パリクラブ理事、西岡寅太郎商店副社長)
  • 小阪田嘉昭氏 (パリクラブ理事、メルシャン技術顧問)
  • 永田精一氏 (パリクラブ会員、サントリー取締役酒類カンパニー副社長)
  • 上口尚史氏 (パリクラブ会員、アサヒビール酒類本部担当部長)
  • 川村玲子氏 (シャンパーニュ地方ワイン生産同業委員会日本事務局代表)

司会者の三浦氏から、本日の4人のプレゼンテターは日本のワイン業界で活躍している専門家であり、特に日本でワイン市場の大きな進展があった1970年代 以降、現在に至るまでの期間において、それぞれの立場で重要な役割を担ってきており、各々の体験を含めた貴重な歴史的事実やフランスワインを中心とした マーケット分析など、色々な意見を聴けることが期待され、本日のテーマに最も相応しいパネラーであると紹介があった。

最初に小阪田氏から「130年前から始まったワイン交流」の技術面の交流についてプレゼンがあった。日本でのワイン造りは明治維新になって、殖産興業政策 の一環として始まり、明治10年(1877)に山梨県勝沼に設立され、現在メルシャンが継承している大日本山梨葡萄酒会社からワイン醸造技術習得のために 2人の研修生をフランスに派遣しており、ワインを巡る日仏交流が130年前から始まっている。しかし、当時の日本人の食生活にワインは合わず、長い困難な 時代を経過し、ワイン消費は東京オリンピック(1964)や大阪万博(1970)の時代に芽生えはじめた。この頃になって、日本のワイン会社はワイン醸造 技術習得のため技術者を海外の大学へ留学させ始め、多くの日本人がフランスの大学で学んで、日本のワイン造りに貢献してきた。近年、日本産ワインの品質が 向上し、国際ワインコンクールでゴールドメダルを受賞したり、海外に輸出できるようになった背景には、130年前の明治初期に既に日仏の交流がはじまり、 多くの日本のワイン技術者がフランスに留学していることが大きく影響していると締めくくった。

永田氏からのプレゼンは「シャトー・ラグランジュの再生」と題する仏シャトー買収とワインビジネスについてであった。サントリーがボルドーのグランク リュ・クラッセに格付けされているシャトー・ラグランジュの買収(1983)と再生について詳細な写真を織り交ぜた紹介であった。シャトー・ラグランジュ はスペイン人の前のオーナーがシャトー経営に意欲を失って、荒廃していたのを日本人としてはじめてグランクリュ・クラッセのシャトーをサントリーが購入す ることになった。日本人がシャトー・オーナーになることのマスコミの反感を含めて買収の苦労話や買収後もシャトーワインのボルドー伝統的取引を尊重するこ と、またシャトー経営をフランス人に任せて、現地化したことなどの紹介があった。ボルドー大学ペイノー教授の指導を受け、ブドウ畑の改植、醸造場の改良、 樽貯蔵庫の増設、シャトー本館をゲストハウスへの改修などを写真で紹介した。見事にシャトー・ラグランジュが再生した様子が説明され、フランス人の当初の 危惧は解消したものと思われる内容であった。

上口氏は「フランスワインを中心とした日本のワイ市場」について、統計資料を使いながらの説明であった。日本のワイン消費は87~90年のボージョレ・ヌ ヴォー・ブーム、97~98年の赤ワイン・ブームで伸びており、輸入ワイン全体に占めるフランスワインは常に50%近くのシェアーがあり、フランスワイン は日本の市場で重要な地位を占めている。国別輸入ワインの10年間の推移はオーストラリア、スペイン、チリ、アルゼンチンの伸びが大きいが、フランスも輸 入ワイン全体とほぼ同じの伸び率のプラス20%となって健闘している。フランスワインの日本の消費者のイメージは、「高級感がある」「伝統のある」「品質 が高い」「特別な食事に合う」等であり、「気軽に飲める」「カジュアルな」「若者にふさわしい」等はイメージとして低いとの消費者調査が紹介された。フラ ンスワインの課題として、価格の上昇、ボージョレ・ヌヴォーの市場縮小、ニューワールドワインと比較してわかりにくい、等の点を上げている。日本における フランスワインの市場拡大のためには、「高級感」「品質が高い」といったイメージを強化させること、手頃な価格の商品の拡大、等を提案している。

川村氏は「フランス高級ワイン中でも人気、消費の高まりが著しいシャンパーニュ」ついて、統計資料と多くの雑誌に取り上げられた記事を紹介しながらの興味 ある説明であった。日本のシャンパーニュ市場は最近の15年間で9倍に伸びており、2007年のシャンパーニュの輸出統計では日本は917万本で、国別ラ ンキングで第6位になっている。特筆されることは、1999年からのワイン消費停滞期にも日本へのシャンパーニュの輸入は順調に伸びている。このシャン パーニュ人気の秘密を多くの雑誌の写真入り記事を示しながらの分析であった。シャンパーニュの消費の拡大は世界的な傾向であり、グラス・シャンパーニュが 普及して手軽にシャンパーニュが飲めるようになり、「伝統的・高級感・祝いの酒」から「はなやか・おしゃれな生活のため」へとイメージが変わってきている ことにある。特に日本市場の特色は消費者が若い女性中心に広がったこと、和食との相性のよさ、季節感を味わう商品であることが挙げられる、と説明された。

4人のプレゼンが終わると、司会者の三浦氏が会場で参加していたCôtes du Lubéronの生産者であるCellier de Marrenonの輸出部長Mr. Oustricを紹介し、フランスワイン輸出企業として長年日本市場を担当している経験から、日本のワイン市場について意見を求めた。

Mr. Oustricは19年間日本市場との仕事をしてきたが、フランスワインが市場第1位の地位を維持しているとは云え、ニューワールドワインの強い攻勢の影 響を受けている。フランスワインの課題は親しみ難い点、価格の高い点、そして消費の未来を担う若者を引き付けていない点とし、日本市場は非常に伝統的であ るが、世界で大きな変化が起きており、それに対応していかなければならない。例えば、スクリュー・キャップ(ねじ式キャップ)はイギリスを先頭に世界で採 用されるようになっており、日本でも抵抗がなくなってきている。フランスワインも今後、若いイメージを作っていくことが必要と指摘し、結論として、日本市 場での成功には高品質な製品、忍耐強い販売努力、良いサービスの3点が揃わなければならないが、日本市場は他国と比べても、更なる成功へのチャレンジが可能であるとした。

既に予定時間の18時30分になり、当日はサントリー美術館休館日であったが、特別のご配慮でピカソ展を鑑賞が予定され、美術館副館長若林覚氏からピカソの絵の見所を説明受けた後、ゆったりと鑑賞することができた。豪華なカタログまで頂いた。

ピカソ展を鑑賞している間にセミナー会場はパーティ会場に模様替えされて、19時15分よりレセプションが始まり、まず、お目当てのシャンパーニュを飲み ながら和気あいあいの歓談の中、フランス大使館経済公使 Mr. Louis-Michel MORRISから挨拶をいただいた。当日の素晴らしいシャパーニュとワインはパネリストの所属会社などのご協力で、パネル内容に因んだ商品を中心に日仏に 関係するものが提供された。日頃、なかなか飲む機会のないシャパーニュとワインを味わう豪華なワインテイスティングとなり、参加者は満足された様子であっ た。
当日、提供されたシャンパーニュとワインは次のとおりで、協賛会社に御礼申し上げます。

  • Champagnes (シャパーニュ)
    Pierre Moncuit “Cuvée Hugues de Coulmet”, Blanc de Blancs (Yokohama Kimishimaya)
    Piper-Heidsieck “Brut Rosé Sauvage” (Asahi Breweries, Maxxium Japan)
    Laurent-Perrier “Grand Siècle” (Suntory)
  • Vin blanc (白ワイン)
    Château Mercian “Hokushin Chardonnay 2007″, Japon (Mercian)
  • Vins rouges (赤ワイン)
    Château de Francs 2005, AC Côtes de Francs, France (Nishioka & Co.Ltd.)
    Grand Marrenon 2004, AC Côtes du Lubéron, France (Nishioka & Co. Ltd.)
    Château Lagrange 1999, 3ème Cru Classé, Saint-Julien, France (Suntory)
    Opus One 2004, Napa Valley, California, USA (Asahi Breweries)

(とりまとめ 小阪田嘉昭)