ランデヴー・フランコ・ジャポネのご案内 「バジョン経済公使の réception de départ」

日仏経済交流協会(パリクラブ)主催
在日フランス商工会議所(CCIFJ)共催

バジョン経済公使は1985年に日本での1回目の駐在を始め、今回2007年に2度目4年間の滞在を終えられました。その間に台湾・中国・シンガ ポールにも勤務されました。これまでにもパリクラブの行事でコメンテーターにもなっていただきましたが、今回は22年間にわたりアジア、特に中国や日本の 経済を観察し、フランスとの経済関係に従事してこられたご印象や今後のアジアとフランスとの関係を率直にお話し願うことにしました。
フェアウェルを兼ねた会合となりました。

日時 2007年12月10日(月)18時30~20時30分
プログラム 18:30-19:30 講演
「アジアの経済発展・中国・日本についての印象 - 1985年から2007年まで5回にわたるアジア駐在を振り返って」
19:30-20:30 ビュッフェ
スピーカー ジャン・イブ・バジョン経済公使(フランス大使館経済部長)
場所 メルシャンサロン
中央区京橋1-5-8 メルシャン本社1階 明治屋並び
Tel:03-3231-5600
最寄り駅 東京メトロ銀座線京橋駅またはJR東京駅
使用言語 フランス語
 

■ご報告

  1. 忘年会の季節にもかかわらず、約60名が参加。主催のパリクラブ側だけでなく、在日フランス商工会議所からも会頭他が参加し、日仏が半々 の参加の催し物となった。バジョン公使による30分ほどの話しの後、20分ほど活発な質疑応答があり、その後レセプションで4年2度目の日本滞在を終える バジョン氏の歓送を行い、ワインを傾け、和気藹藹と歓談するうちに時間となった。
  2. バジョン氏の話は「アジアの開発から何を学ぶか」とのタイトルで、日本に2回、台湾・中国・シンガポールに各1回、合計15年間滞在し、観察したアジアの経済の発展の歩みと今後の見通しについて、個人の立場で率直な意見の披瀝がなされた。話しの要点は以下のとおりである。

    始めに日本・中国・シンガポールなどの3地域について、簡潔な観察が述べられた。日本では経済が回復してきたが、基本的に開放は進まず、島国のため移民や 外資の買収に警戒的で、政治も分かりづらく日本の魅力がそがれている。これまでのアジアでの日本の優位性が中国に挑戦されており、日本は消費市場の大きさ から中国を機会として捉える一方、リスクがあるために中国向け投資は節度をもって行っている。将来の日本は、政府債務と高齢化の負担が増大していく。
    中国は日本とは異なった経済モデルで、直接投資受入れで世界の工場になり、更にそれを超え、過去のポジションを取り戻そうとしている。今後も20年間は雇 用を確保していくために成長を続ける必要がある。中国の文化と価値観は20世紀の波乱に富んだ歴史のなかで培われ、金銭を重視するところは日本とは異な る。外部からの圧力には抵抗するので最近の元切り上げへの米EUの働きかけも効果が少なく、外圧に弱い日本とここでも異なる。
    台湾やシンガポールなどは中国と日本の関係の中で機会を捉える若い国である。
    こうしたアジアの国々は開発(日本が先頭)、自由貿易協定(中国が道を示す)、資源獲得、金融市場の場で競争している。米ドルとの関係が競争力に影響があ るので重要であり、輸出先でかつ地政学的な紛争解決力のある米国に依存し、その影響がきわめて大きく、欧州やフランスへの認識は通貨としてのユーロを除い ては低い。地域統合については、日中、シンガポール・マレイシア間などに歴史的な不信感が残っており、それを解決せんとする政治的な意思は弱い。経済面で は金融協力を行おうとしているが、経済政策面での協調・収斂は進んでいない。
    アジアの将来についてはグローバルに輸出をする経済モデルが続くだろうが、米国への依存を減らしたアジア中心が必要になる。環境への悪影響、資源の稀少化 というリスクのなかで、アジアは持続的な成長を可能にする産業革命が必要であり、ここに欧州にとって協力の可能性がある。
  3. Q&Aのセッションでは、東南アジアの華僑、アフリカでの中国の急速な進出、日本企業とのアライアンスが、話題になった。最後の 点については、ルノー・AXA・VALEOが日本に進出した10年間(1992-2002)は窓が開いていて投資が容易であったが、最近ではむしろ韓国の ほうが機会は多いのではないかとの回答であった。
  4. 最後に司会者として、バランスがよく、歴史と地理の両面で実にスマートにTOUR D’HORIZONをしてくれたことに感謝をするとともに、下記の3点が問われているのであろうとの締めくくりを行った。
    1. 日本が将来の成長を確保するためには外資への期待があり、フランス企業にとっての投資機会はあるのではないか
    2. アジアはDECOUPLINGし、米国経済の影響力は弱まっているという見方が出ているのではないか
    3. 中国などが環境に優しい成長・工業化を進められるのか
  5. バジョン公使は15年間に5回もアジアに滞在し、中国語だけでなく日本語も話す、アジア通の外交官で、フランスのシビル・サービスならで はの存在であったとの感を強くした。パリクラブとしてはこの4年間、フランス大使館経済部長として催し物などで協力を頂いた。ブッフエではパリクラブ会長 より改めて感謝の辞が述べられた。今後の一層の活躍を祈り、そしてできうれば日本やアジアに引き続き係わられることを望みたい。

(報告者 パリクラブ会長代行 久米五郎太)