講演会「日仏自動車産業の課題」

日仏経済交流協会(パリクラブ)主催
在日フランス商工会議所(CCIFJ)共催

現在世界中の自動車産業界は大きなチャレンジに直面しています。すなわち地球環境問題という大きな課題です。20世紀の文明は人類が移動の自由を得 ることによって大きく発展しました。しかしその代償は、21世紀の今日エネルギー資源の供給制約の顕在化と地球温暖化というかつてない課題に直面している ことです。

移動手段として最も普及し最もエネルギーを消費している自動車を製造販売する自動車産業はそれぞれどのようにこの課題に取り組んでいるか、また国際 協力はこのためにどのような形で推進されているか、日仏関係ではどうなっているか、などプジョージャポンのポワラ社長にお話いただきました。10月の東京 国際モーターショー等で日本国内でもこれらについて社会的な関心が盛り上がるものと思われる状況の中、開催されました。

日時 2007年11月14日(水)18時30~20時30分
スピーカー ティエリー・ポワラ氏
プジョージャポン株式会社代表取締役社長
司会役 姉崎直己氏
日仏経済交流会理事、日本自動車輸入組合副理事長
コメンテーター 錫村寛海氏
(独)中小企業基盤整備機構 国際統括室 経営支援専門員
場所 メルシャンサロン
中央区京橋1-5-8メルシャン本社1階 明治屋並び
Tel:03-3231-5600
最寄り駅 東京メトロ銀座線京橋駅またはJR東京駅
使用言語 フランス語

■ご報告

Mr.Poirat 講演要旨「グローバル化した世界での自動車産業の生き残る為に」

  1. 世界の自動車市場規模 68,2百万台、2000-2006年にかけては年間3%の伸びを記録した。欧米、日本以外いわゆる新興国では年率15%の成長を記録している。その結果新興諸国の総市場は今日では年間1700万台と欧州市場に相当する規模に成長した。
  2. 一方生産は6,980万台を記録している。生産と販売の関係は地域別に違う。例えば欧州市場では生産1600万台に対し販売は1700万台であり、差は日本、韓国などからの輸入となっている。因みに日本では生産と販売の差が550万台あり、これらが輸出されている。
  3. 人件費を見てみる。USAを100とするとEU15カ国は143、フランスは157、日本は94。これに比べチェコは33、中国は5となっている。こうした背景もありBRICsでの生産は急増している。
  4. 製品としての自動車の進化の実態はどうか?世界の大きな問題が環境問題である。CO2の全体の排出量に対する輸送部門の排出は25%である。自動車技術もますます環境を意識した開発が行われている。
  5. 輸送部門でCO2を削減するには以下のようなことが挙げられる。代替燃料などである。
    1. 電気化
    2. 車両全体効率の向上
    3. パワートレイン(駆動)効率の向上
    4. 公共輸送の活用
  6. 1リットルのガソリンはどのように使われているか?車に注入されるガソリンを100とすると、実際に車を動かすために使われているのは 15%に過ぎない。もっと車を改善する余地がある。自動車の性能を上げてCO2削減するためには、新素材の発見使用、ガソリン、ディーゼル、エタノール、 バイオディーゼル使用の新型エンジンの開発、その他、トランスミッション、タイヤ、Stop & G0, GPS、ドライバーの性格。既にある技術をより活用する。
  7. 一方車に対するユーザー側からの期待は多様性に富んでいる。欧州では排気量の低い車に需要は移りつつある。またセダンタイプの乗用車から、スペースを重要視するワンボックスタイプやSUVタイプの需要増が見込まれる。発展途上国には低価格車が続々導入されようとしている。

結論:こうした複雑且つ困難な自動車を取り巻く環境でこの産業が発展するためには以下のようなこためには以下のようなことを考えて行かねばならない。

  • 車両価格の安定と熾烈な競争
    • 開発コストのシェア
    • プラットフォームの数を制限する。
    • 市場接近型で柔軟性あるが、非常に生産性高い工場をもつこと
    • 品質の追求
  • 環境保全と持続的成長の為に
    • 整合性あり且つ野心的な世界レベルと地域での戦略を打ち出す。
    • R&Dへの継続的投資。
    • 従業員と株主への適切な還元
    • 企業発展のための営業利益の確保
  • こうした新しい局面での自動車産業への税制の配慮。

この後、Peugeotの環境を配慮しつつ性能向上した製品群の紹介があった。

 

コメント:錫村寛海(トヨタ自動車OB)

今日の世界的課題は環境問題を考慮した持続的発展を如何に成し遂げてゆくかであろう。Piorat氏のプレゼンにあるようにCO2排出については自 動車の責任は大きい。各メーカーは限られた経営資源の中で技術革新を推進している。技術開発分野ではメーカー間の協力を推進すべきだと思う。(販売分野は 不可) かつてPSAの会長であったカルベさんもその趣旨のことを言われていた。

排気ガス規制に関してEUが近い将来新たに自動車産業にとって規制を実行するであろう。 グローバル化した世界ではEU、USA、日本などの間で整 合性のある政策をとってゆく必要がある。OICA(世界自動車工業会)など業界団体が果たす役割が意義あるのではないか? 国連などの国際機関での政策協 議も必要になろう。

一方でユーザーの皆さんの車に対する好みはプレゼンの中にもあるように多様性に富んでいる。Eco Carと言うだけで 性能が良くなければお客様は買ってくれない。どの辺りが車メーカーの苦悩するところである。

OICAの統計では世界の自動車産業の Turn Over 合計は1兆9000億ユーロで世界6番目の経済大国に匹敵する。また世界全体直接雇用数は800万人で間接雇用はその5倍と見られ、自動車産業全体では5000万人の雇用を抱えている。

この産業が生存して行く為には環境問題と車に関するユーザーの皆さんのご理解が不可欠。