講演会「フランス企業の日本市場でのマーケティング - ロクシタン社の経験」

日仏経済交流会(パリクラブ)主催
在日フランス商工会議所(CCIFJ)、中小企業スタートアップ委員会 共催

0417-loccitanne日本に進出してきているフランス企業は、それぞれのブランドや商品・サービスの特性に応じてマーケティングと販売を行っています。CAC40に属する国際的 な大企業や長い歴史を持つラグジャリー企業の活動は比較的よく知られていますが、中小・中堅企業のなかにも特徴のある活動を行っているところが少なくありません。

今回は初めにコンサルタントであるローラン氏にフランス企業と日本市場について概観していただき、その後最近店舗を急速に増やし、注目を集めているロクシタン(L’OCCITANE)社の日本での活動について鷹野志穂社長からお話をお伺いしました。

同社は31年前に設立され、南仏のハーブやアフリカの木の実を使った自然派の化粧品を既にお使いの方も少なくないと思います。プロバンスのオリーブとラベンダーをあしらった大きなポスター(上記写真)をご覧になった方もいらっしゃるでしょう。

プレゼンテーションは日本語と一部英語にて行われました。

日時 2007年4月17日(火)
18時30分~ 21時(講演は1時間15分、その後ビュッフエ)
スピーカー ■フレデリック・ローラン氏
Frédéric Laurent Consulting Ltd.代表取締役(使用言語:英語)
■鷹野志穂氏
ロクシタン・ジャポン(株)代表取締役社長(使用言語:日本語)
司会 ■綿貫健治氏
横浜国大助教授 元ソニー・フランス副社長 パリクラブ理事
場所 メルシャン・サロン(メルシャン本社1階)
中央区京橋1-5-8 明治屋並び TEL:03-3231-5600
最寄り駅 東京メトロ銀座線京橋駅またはJR東京駅
 

■ご報告

参加者:76名

講演要旨:フレデリック・ローラン氏

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  • FLCは有名フランス企業を日本市場に紹介してきたが、中小企業を中心に毎年20-30社の日本市場参入のお手伝いをしている。セクターとしては、食料、化粧品、文化製品、ファッション、工業品などさまざまである。
  • FLCは、中小企業の商品の市場との適合性、商品に対するアドバイス、顧客やパートナー探し、日本の顧客やパートナーとの会談の前後のサポートなど行っている。
  • 経営手法としての業界の「ベストに学ぶ」と言うベンチマーキング・マーケティングを行っている。
  • 日本に進出する企業は増加し、日本のフランス系外資会社は支社などを含むと720社ある。親会社ベースでは、フランス商工会議所には250社がメンバーとなっており、東洋経済の統計では240社などの数字がある。

講演要旨:鷹野志穂さん

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  • ロクシタン社は1976年、プロヴァンスの大学で哲学を修めたオリヴィエ・ボーサン(Olivier Baussan)氏が創設した。
  • 商品としてはフランス、プロヴァンスのライフスタイルを提案するコスメティックブランド(ロクシタン)を販売している。ロクシタンは植物原料を主原料に化粧品(スキンケア、ボディーケア、バスケア)、芳香剤(フレグランス)などを製造・販売しているブランドである。
  • 世界60ヶ国、1000店舗で販売している。
  • 日本進出は、1988年11月で、現在47店舗、従業員350人(店舗で300人。日本は米国に次いで世界で第二番目に大きいマーケットに成長した。
  • ロクシタンの基本的なフィロソフィーは、
    1)感受性(Sensorality)、
    2)真実性(Authenthicity)、
    3)尊敬(Respect)である。
    顧客に、プロヴァンスの香り、ライフスタイル製品、自然商品を「A True Story」と言うメッセージとして届けている。
  • ロクシタン・ジャポンの売上は過去約6年間急速に増加し12倍になった。
  • 日本でのマーケティングの成功の要因は、
    1)フランスらしさ(プロヴァンス)、
    2)アントレプルナー精神、
    3)挑戦(チャレンジ)、
    4)興奮(エクサイトメント)を提供したことが上げられる。
  • 販売促進も、
    1)定説を守らない(雑誌広告をしない)、
    2)店舗の“ビルボード化”(店をショールームにする)、
    3)ユニークな広報(参加型のプレス・イベント)、
    4)頻繁なプロモーションイベント(新製品導入)、
    5)フランスらしさの追及(店舗のインテリア)など他社との差別化を意識的に測っている。
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司会者の感想

  • 今回のセミナーの参加者(特に若い人)が多いことを見てもロクシタン社の日本での成功は非常に注目されている。進出10年にも満たないがユニークなマーケティング戦略で、伝統的な化粧品会社に肉薄している。ロクシタンのKFS(成功要因)は次の様にまとめることができる。

    1) 経営者の基本理念がしっかりしていて、ビジネスの軸がぶれてない。
    理念は伝統と価値で、創業者の哲学を“A True Story ”として紹介している。

    2) 他の会社に比べ差別化戦略がしっかりしている。
    フランス性、プロヴァンス性(色、匂い、伝統など)、自然性などを人間の感受性、興奮、尊敬などとうまくミックスさせて人間中心の独特のライフスタイルを提案している(The sun smiles on province.)。

    3) ユニークなマーケティング戦略で注目を浴びている。
    高い広告や百貨店の展示ではなく、店自身がショウルーム。
    頻繁な販売促進や広報活動。
    旺盛なチャレンジ精神。

    男性の顧客が少ないということなので、ショウルームに行ってプロヴァンスの雰囲気を“浴びて”ほしい。

(文責:綿貫健治)