日仏経済交流会(パリクラブ)主催
在日フランス商工会議所(CCIFJ)共催
原油の需給が著しくタイトになり、原油価格も緩んで来つつあるとは言え、依然高水準にある。今後の世界のエネルギー市場はどう展開して行くのだろうか?近 年、スーパー・ジャイアント・オイル・フィールドなどの大規模油田の発見は殆どなく、世界の石油生産量はピークを迎えるのではないかというピークオイル・ セオリーがいよいよ現実味を帯びて来ている。また最近脚光を浴びているバイオ・エタノール等の代替エネルギーはエネルギー需給の緩和にどの程度有効なのだ ろうか? 新規油田、ガス田開発の為に今メジャーはどのような新技術を用い、どのような努力をしているのだろうか? 今回の講演では、このような疑問点に 焦点を当て、専門家のドメスティエ氏にお話し頂きました。
なお、講演会終了後は、パリクラブとしても大変お世話になったドメスティエ氏の歓送会を開催いたしました。
日時 | 2007年3月14日(水)18時30分~21時 |
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場所 | メルシャンサロン 中央区京橋1-5-8 メルシャン本社1階 明治屋並び Tel:03-3231-5600 |
最寄り駅 | 東京メトロ銀座線京橋駅またはJR東京駅 |
プログラム | 18:30~19:45 講演会 19:45~21:00 講演に引き続き歓送会を開催 |
スピーカー | ■ユベール・ドメスティエ・デュブ-ル氏(M. Hubert de Mestier du Bourg) 在日フランス商工会議所会頭、トタル社北東アジア代表 |
アニメーター | ■沢田 義博氏 パリクラブ理事、帝国ピストンリング(株)常勤監査役 |
使用言語 | 仏語(質問は日仏語両方可) |
■ご報告
昨年来、原油の需給が著しくタイトになり、ニューヨークのWTI価格は昨年7月、既往ピークの77ドルに達した。現時点でも60ドル前後で推移して おり、依然高水準にある。今後の原油市場或いはエネルギー市場はどう展開して行くのだろうか? 具体的には次のような疑問点が考えられる。
- 原油の需給と価格は今後どう推移するのか? 2010年に85-90ドルという説もある。
- 近年Super Giant Oil Fieldと呼ばれる超大規模油田の発見は皆無に等しい中で、「世界の石油生産量はピークに達する」という”Peak Oil Theory”は、いよいよ現実味を帯びて来るのだろうか? 既に2,3の石油メジャーによる年間の新規油田発見は年間生産量の20%に過ぎず、石油埋蔵量を食いつぶしている状況にある。
- 新規油田・ガス田開発の為に、石油メジャーはどのような新技術を利用しているのだろうか? またどのような問題に直面しているのだろうか?
- 最近脚光を浴びているオイル・サンド、オイル・シェール或いはバイオ・エタノール等の代替エネルギーはエネルギー需給の緩和にどの程度有効なのだろうか?
- 現在、中東や中国における精製設備の不足が大きな問題となっている。この問題はいつ頃解決されるのだろうか?
今回の講演会では、上記疑問点に焦点を当て、専門家のドメスティエ氏にお話頂いた。以下はそのサマリーである(番号は上記に対応している)。
- 2005年から10年にかけてのエネルギー需要の伸びは年1.7%で推移する見込み。種類別伸び率は、ガス:2.2%、石炭:2.0%、 水力等:1.9%、石油:1.3%、原子力:0.9%。今後は原子力の伸び率が高くなるだろう。但し石油やガスの重要性は今後も減る事はない。また原油価 格は今後45ドル以下になることはなく高価格が続くだろうが、どこまで上がるかは分からない。
- 確認埋蔵量については、石油は今後40年の消費を賄える規模。一方ガスは60年分である。石油を長持ちさせる為の最良の解決法は今後の石 油需要の伸び率を1%以下に抑える事である。一部の専門家は現時点で既にPeak Oil に達していると主張しているが、IEAは2015年頃と推定している。
- (1) 現在トタルが注力しているのは、新技術を用いた深海油田開発(西アフリカ沖)、超重質油の品質グレードアップ(ヴェネズエラ、カナダ)、既存油田の開発期 間の延長(原油価格の高騰及び新技術により、可採埋蔵量が増えた)、LNG開発(イェーメン)、GTL(Gas to Liquid)等である。なお原油価格が最低50-60ドルでないと、新規のプロジェクトはペイしない。技術進歩により原油探査についてのトタールの成功 率は40%にまで上昇している。
(2) 石油メジャーにとっての挑戦は次の二点。
・生産国の国営会社が原油生産のコントロールを掌握しつつあり、メジャーの世界シェアが16%程度にまで低下してしまっている中で、どう主体性を発揮するのか?
・今後も石油に係わる技術フロンティアを更に拡大できるか?
更に地球温暖化問題にも真剣に取り組む必要がある。 - 代替エネルギーについては、トタルはGTL、BTL(液化バイオマス)、バイオ・ディーゼルなどを開発中である。これらの代替エネルギー は、エネルギー需給緩和という観点からは、あくまで石油の補完的位置付けにとどまるだろう。バイオ・エタノール等のガソリンとの混合率については、 2015年で10%がそのターゲットである。
- 中国の精製設備についてはトタルが第1号の精製所を建設したが、十分な設備を持つにはまだかなり時間がかかるだろう。中東についても同様である。
(文責:沢田義博)