瀬藤澄彦氏との昼食懇談会

日時 2006年4月14日(金)
会場 シーボニアメンズクラブ

0414-seto-3_gd4月14日(金)にジェトロ・リヨン事務所長の瀬藤 澄彦氏を囲んで、昼食懇談会を開催しました(於 シーボニアメンズクラブ)。出席者は瀬藤さんを入れて14名でした。
瀬藤さんのお話は後掲レジュメに沿って行われ、2時間半近く活発な意見交換の場となりました。7項目ともに大変興味深いテーマで、それぞれどれをとっても数時間はかかりそうなところを、要領よく判りやすくご説明いただいて大変勉強になりました。
天候の違いからか瀬藤さんはのどを痛めておられて、普段の美声とは打って変わってかすれ気味の声を絞り出しての熱演でありました。本当にありがとうございました。
丁寧なレジュメで、内容の見当はつくことと思いますが瀬藤さんのお話の中で、特になるほどと思ったポイントを補足します。

「2006年の欧州政治経済情勢」
欧州の相対的地位の低下は皆が認識しており、各国とも構造改革に取り組んでいるが、なかなか苦労している。それでもやはり日本として欧州モデルから学ぶところは多い。

0414-seto-1_gd「2007年のフランス大統領選挙の予測」
選挙の実施時期が重なり、大統領選挙の勝者(政党)が国民議会選挙も制する可能性が高い。Cohabitationにはならないだろう。勝者の予測は困難だが、ロワイヤル女史の人気は本物になってきた。シラクがまた候補として出てくるという冗句のような話もある。

「競争優位時代の産業クラスター」
産業クラスターという言葉が流行り言葉になっている。官が指導しているのはフランスらしいが、競争相手の民間企業が相互に協力しあう図式は新鮮だ。

「敵対的買収に揺れる欧州」
ダノン、アルセロール、スエズ等フランスを代表する企業が海外からの買収対象になると、政府が阻止策に躍起になる。経済愛国主義などという言葉も普通に使われている。フランス企業は世界で買収を行っており、勝手な論理にも見える。

0414-seto-2_gd「新規雇用契約(CPE)反対の背景」
若年失業率がイタリーに次いで高く、企業の雇用意欲を高めるために打ち出した政策として、決しておかしな内容ではないが、方法論の失敗か。就任以来失業率を下げてきた、ドビルパン首相の(自信に裏打ちされた)強攻策が裏目に出た。

「地域経済活性化に資するニュービジネス」
パリと南を結ぶ第二の幹線オートルートにかかるミヨー大架橋は迫力満点で、観光名所になっている。ご訪問をおすすめする。

「女性に職業と家庭を両立させる欧州モデル」
昨年11月にドービルでダボス会議の女性版という形の会議が行われた。米国モデルと違い欧州モデルは地味ながら女性に職業と家庭を両立させるという議論が印象的だった。

文責 増渕 文規(2006年4月14日 記)

 

【レジュメ『欧州の最近の政治経済をどう考える』瀬藤澄彦】

1 2006年の欧州政治経済展望
―世界3極のなかで後塵 地球劇場の舞台裏
―欧州型福祉国家モデルの限界
―自由でもない平等でもない博愛 

2 2007年のフランス大統領選挙の予測
―絶対王政を手にした大統領・遠のく保革共存の可能性
―2002年の16人を凌ぐ史上最高の立候補者数か
―期待される大統領像 50才台の誠実で市民の声を聞く内政重視型
―第1回投票はロワイヤル女史の圧勝 決選投票は組合せ次第

3 競争優位時代の産業クラスター
―全国に66ヶ所のPo^les de compe´titivite´
―300ヶ所の小型地方クラスターも発足へ
―グローバリゼーションの逆説 「経済の領土化」

4 敵対的買収に揺れる欧州
―敵対的買収はどこまで有効か
―経済愛国主義
―国の競争優位とはなにか

5 新規雇用契約(CPE)反対の背景
―雇用改革とビルパン
―青少年の不安定雇用・階層資産格差 中間階層社会の終焉
―第5共和制の機能不全 

6 地域経済活性化に資するニュービジネス
―世界最大のつり橋 ミヨー大架橋
―リヨン 自転車が都市交通を変える
―リヨン 12月8日の光の祭典

7 女性に職業と家庭を両立させる欧州モデル
―女性ダボス版ドービル世界会議
―男女の新たな共生関係を目指して