第46回ランデブ-・フランコジャポネ/お帰りなさい磯村さん

日仏経済交流会(パリクラブ) 主催
在日フランス商工会議所(CCIFJ) 共催

日時 2005年7月6日
場所 メルシャンサロン

0706-isomura-2去る7月6日、パリクラブの初代会長でこのほどパリ日本文化会館館長の任を終わって帰国された磯村尚徳氏の帰国歓迎会「お帰りなさい磯村さん」(CCIFJ と共催)がメルシャンサロンで開催され、同氏を懐かしむ大勢の出席者でにぎわいました。最終的に来場者は135人を越え、会場は活気に満ちあふれました。 その中には名誉会員の稲村光一氏、鈴木忠雄氏、豊島格氏、ヴァイオリニストの千住まり子氏、ファッション・音楽界で著名な永滝達治氏のお顔もありました。

このときの講演で磯村さんは、日本の食べ物や漫画などがフラン人の日常生活に浸透しているなど、日本への関心が広がりを見せていることを紹介されました。

磯村さんは同時に物質的豊かさ、便利さに浸りきって過去の歴史体験を忘れがちであることが日本人の危うさであると指摘され、「自由」に軸足を置いたアメリカのグロ-バリゼイションの時代にこそ、「公正」を追求するヨ-ロッパの民主主義が意味をもつと述べられました。

0706-isomura-1お話の概要は以下のとおりです.

三度目、十年にわたるフランス滞在を終えてこのほど帰国した。ヘンリ-・ミラ-が矢張り十年のフランス滞在の後1940年に帰国して書いた「冷房の悪夢」と同じような感懐に浸っている。その顰に倣って言えば日本は「楽園」である。それも「完全空調の楽園」だ。

と言うのも、日本では、24時間営業のコンビニや2分間隔で走る電車などしごく 実用的で便利この上ないからだ。しかしその便利さは少しばかりわざとらしく、不自然に思える。
フランスと言った場合日本人の頭にはルイ・ヴィトンやエルメスしか浮かばない。「啓蒙の世紀」や「革命」が何であったのか判ろうとしない。日本の若者はこの天国でぬくぬくと育ち国際関係の現実を知らない。これが日本の脆さである。

他方フランスは「約束された楽園」を追い求めてやまない。ヨ-ロッパは幾多の浮沈を繰り返してきた。そのヨ-ロッパ統合を思い描いてフランスは自分の楽園を捜し求める。

アメリカ流のモデルに代わり得るのは唯一ヨ-ロッパのそれである。今こそヨ-ロッパは強くなければならない。フランスと日本は素晴らしい相互補完関 係にある。経済では長期戦略から具体的な企業活動に迄いたる。その及ぶ範囲は狭いかもしれないが外交分野においてすら相互補完の関係が見られる。

いまや日仏の調和と協力が求められる。それはフランスの叡智と説得力、日本の具体化処理改善能力、この二つの共働である。

【磯村尚徳氏略歴】
日仏経済交流会(パリクラブ)設立発起人代表で初代会長。パリ日本文化会館の設立に携わり、館長を務める。ユネスコ事務総長特別顧問。既往にNHK特別主 幹(専務理事待遇)、報道局長、ヨ-ロッパ総局長、ワシントン支局長。著書に『日本人はなぜ世界が読めないのか-カルロス・ゴーンの成功の秘密』 (2003年、旭出版社)、『ちょっとごぶさたしましたが』(1991年、講談社)、『ちょっとキザですが』(1982年、講談社)ほか。