ドニーズ・フルザ教授を囲むディネ・コロク

フルザ教授の講演、ディスカッションは、著書の淡々とした書きぶりからは想像がつかないAgressive 且つ熱のこもったものであり、時の移りを感じさせませんでした。あらゆる意味でレヴェルの高い優れた会合でした。質疑も講壇に立って述べられるのではな く、参加者一同の真ん中に席を占められて応対されると云う、あたかもゼミのような和やかな雰囲気でした。新年度から社会経済委員会管掌副会長を依嘱され、 今回司会を務められた久米五郎太氏の解説紹介記事を下記掲載します。

日時 2005年4月20日
講師 ドニーズ・フルザ教授

【ディネ・デバ日本経済「永続」再生論 / 著者ドニーズ・フルザ教授を囲んで】

4月20日、バンク・ド・フランス金融研究財団代表(前通貨評議委員会メンバー)のドニーズ・フルザ教授をお招きし、日本経済についてのディネ・デバを開 催しました。教授は、フランス外務省の派遣員として今般来日、翌日には日仏会館で「ヨーロッパの視点:日本経済「永続」再生論」という題で講演される多忙 なスケジュールのなかで、貴重な時間を割いていただきました。

フルザ教授は1977年の学会で初めて日本を訪問したとき以来、日本経済に興味を持ち、その後も来日、日本企業を多数訪問し、ソルボンヌ大学では日 本経済、アジア経済について教えていらっしゃいます。2002年には“Japon, eternelle renaissance”を著し(PUFYORI.この時点でいち早く日本経済の再生を予測)、2003年末に発刊した第2版は愛知万博の機会に来日した シラク大統領にも献呈されています。なお、日本語版は、パリクラブ会員の瀬藤澄彦氏(ジェトロ・リヨン事務所長)が監訳し、『日本経済「永続」再生論』の タイトルで本年1月彩流社から刊行されています。

0420-furuza-2デバでの教授の論点は、日本経済は90年代からの長期不振を脱し、その構造が変化し、その結果は03-04年の回復に現れ、再生(renaissance) の途上にあるというものです。1960年代以来の日本型発展モデルの有効性が90年代以降問われており、日本は今後どのようなシナリオのもとで発展してい くかを明らかにする時期にきていると論じています。その際に採用すべきシナリオは、スイス型幸福(自国のみの繁栄をめざす)ではなく、社会を冷静に変革 (revolution)していくシナリオであるべきであり、既にそうした動きがすすんでいると教授は述べます。日本企業はリストラの一方でイノベーショ ン投資を進め、海外投資を受け入れ、中国への生産拠点の移転なども行っている。金融機関の不良債権処理や再編も進み、政府は円高を抑え、金融や貿易投資の 面でアジア地域との連携を深めているなど、日本経済の変革を可能にする条件は備わってきている。そのなかで日本でも資本市場の役割が増し、雇用形態が変化 してきているが、日本がめざす経済社会はアメリカとは異なった形であろうと教授はいいます。そして、教授は興味深い主張をしています。すなわち、日本は鎖 国を含む長い歴史のなかで、「集団の文化」「調和の重視」「プラグマティズム」といった特性を培ってきたので、静かに深いところで、時間をかけて変革をす すめていくことができるのだと。 

こうした教授の見方に対しては、多くの企業でリストラが進んだものの競争戦略が充分に展開できていないことを知り、財政赤字拡大と少子高齢化が進む なかで、国民の不安感も強く、長期的に成長率が低いとの予測がでており(日本21世紀ヴィジョンでは1-2%台)、また最近では中韓との関係がギクシャク しているのに直面している日本側の出席者にとっては、おおいに勇気を与えてくれるものであり、日本の将来をもっと楽観してもよいという気持ちを与えてくれ ました(ただし、筆者は少し買いかぶられているような居心地の悪さも感じました)。教授は質問に答えて、日本は少子高齢化に対しては技術進歩を加速するこ とで対応すべきであり、今後潜在成長力を引き上げるべきであるとのコメントで、その点には大いに同感いたしました。

この他、日中台の関係、5月29日のEU憲法国民投票で若しnonが多かったら、バンクドゥフランスの人員削減といった、アクチュアルな問題についても話題が及び、アットホームな雰囲気の中で、論理的でかつずいぶんと踏み込んだ教授のコメントをきくことができました。

4月にはパリクラブ主催のデバが2件続き、沢田さんがフランス経済を論じ、フルゾさんが日本経済を論じました。議論では日仏相互の見方や関心が交差 し、相互に学ぶapprendre l‘un a l’autreというパリクラブのひとつの狙いが果たせたように思われました。

(文責 久米五郎太)