デバ・スペシャル「日本経成長への選択肢 – フレンチ・パラドックス?」

日仏経済交流会(パリクラブ) 主催
在日フランス商工会議所(CCIFJ) 共催

フレンチパラドックスは、受付期限終了に併せて直ちに締切にする盛況でした。新年度から社会経済委員会管掌副会長を依嘱され、司会を務められたた久米五郎太氏の報告とデバのレジュメを下記に掲載します。

日時 2005年4月11日
場所 京橋 メルシャンサロン
発表者 沢田義博氏 (富士投信投信顧問 常任監査役、元富士銀行 パリ支店長、元JETRO パリ/DREE(仏経済財政産業省) シニア・アドバイザー)
特別参加 在日フランス商工会議所会頭 ユベール・ドメスティエ氏

0411-debat-12005年4月11日、京橋のメルシャンサロンを会場に開催されたパリクラブのデバ・スペシャル「日本経成長への選択肢 – フレンチ・パラドックス?」に57名が参加した。発表者に、富士投信投資顧問 常任監査役、元富士銀行パリ支店長、元JETRO パリ/DREE(仏経済財政産業省)シニア・アドバイザーの沢田義博氏をお招きした。沢田氏の発表に引き続き、特別参加者の在日フランス商工会議所会頭ユ ベール ド・メスティエ氏にコメントをいただいた後、質疑応答を行った。

日本人はフランス人よりはるかに長く働き、国としての投資比率や研究開発額などもフランスを上回っているのに、何故経済成長率では年平均で1%も低 いのだろうか。講師の沢田義博氏(パリクラブ)は、フランスが対外直接投資と外国人観光客の受け入れで日本を大きく引き離していることにその要因があると 注目した。

コメンテーターの在日フランス商工会議所会頭ユベール ド・メスティエ氏は、日本は近年成長率が低かったが、そのなかで省エネルギー化が大きく進 み、海外投資による海外生産比率が高まっていると指摘。また、直接投資受け入れでは外国企業にとって日本のパートナーが必要な市場であり、観光客は地理的 な位置から今後アジアに多く依存していくのではないかとコメント。

フランスのマクロ経済については、アストリ財務公使より、成長率は米・英より低く、労働市場の硬直性やイノベーションへの投資の遅れが問題であり、 人口の高齢化、財政赤字の拡大、公的部門の改革などの課題は日本とも共通しており、今後改革を進めざるをえない状況にあるとの説明があった。会場からは、 移民労働力の活用、民営化の進展、中国向け投資などについての質問もでて、仏日両国経済のトピックスに話題が及んだ。

司会として聞いていて以下のようなことを結論として思った。フランス人はワインをあれだけ飲んでいるが、長生きなのがパラドックスだといわれる。海外投資受け入れでも、国際投資家は立地先としてのフランスは英独に比べの魅力が少ないと評価しているが、実行される投資額は英国に並んでいる。この調査を したERNST&YOUNG社はレポートをフランス・パラドックスと題している。日本の将来を考えると、少子高齢化が進みフランスより潜在成長力が低いと 見られている。その中で日本としても構造改革やイノベーション投資などを着実に進めることが必須である。それと同時に、もっと外に国を開き、直接投資や観 光客、さらには海外の労働力を多く受け入れることで活力を高めるべきであろう。フランスの政策に学ぶところは多い。

(パリクラブ理事:久米五郎太氏)

 

【沢田義博氏スピーチの要旨】

フランスに滞在した日本人の多くは「夏には約1か月の休暇を取り、週35時間労働で、何故この国の経済は回っているのか?」と感じるのではないだろうか? 事実フランス製造業の年間労働時間は約1,500時間で、日本に比べ約400時間少ない。失業率は日本の2倍以上の9.9%。ストも多い。それにも拘ら ず、過去10年間の平均経済成長率は2.1%と日本より約1%高いのである。何故か?バブルの後遺症などに長期間悩まされた日本に原因があるのは間違いない。又、日本の労働生産性はG7では最下位である。

0411-debat-2しかし、それだけだろうか?そこで日仏の経済指標などを比較すると、対内直接投資及び外国人観光客数についての大きな差に気がつく。

まず対内直接投資だが、フランスの対GDP比率は累積残高ベースで 22.2%である。日本は1.3%に過ぎない。フランスは投資対象国としての魅 力を向上させる為、30年近く前から歴代政府が音頭をとり、対投資庁を中心に外国企業誘致に向け不断の努力をしている。外国企業の意見にも積極的に耳を傾け、問題点の解決に努めている。

外国人観光客については、フランスを訪れる観光客は世界一で、年間約7,600万人。その消費額は約4兆5千億円に達する。GDPの2.3%であ る。一方日本の数字は約6百万人、約9千億円に過ぎない。フランスではパリ観光局を始め、各地方が頻繁にキャンペーンを催し、文化省は文化遺産の保護に余念がない。

更に、シラク大統領の強力なリーダーシップの下、各省庁は国益をしっかり見据えた戦略を立案、実行している。この辺りにも原因がありそうだ。日本も 小泉首相の指示により、遅ればせながら対日直接投資額及び外国人観光客数の倍増を図るべくキャンペーンを開始した。どうやらワインのフレンチ・パラドック スとは異なり、これは政府の戦略の問題と言えそうだ。