パリクラブのネットワーキング

「日仏の関係で重要なのは
“量的”より多様であること」(瀬藤)

パリクラブ 以前に比べると、日本の経済や外交、また民間レベルでの交流においても、フランスが占める割合は低下しているのでは?と感じています。そうした状況の中で、これからの日仏関係はどうあるべきだと、みなさんはお考えでしょうか。

瀬藤 確かに、日本の海外投資の中でフランスが占める割合は2%前後で、アメリカやアジアと比較すると高いとは言えません。けれど、6月にオランド大統領が来日して、「日本とフランスは補完関係にあり、強いパートナーシップを築きたい」という共同宣言が発表されました。「例外的な戦略的パートナーシップ」と名付けられました。二国間関係では異例とも言うべき宣言が両国首脳によって発せられた意味は大きい。この背景には、第1にグローバル化の世界で日本とフランスは同じ民主主義という価値観を共有し、政治経済面でも準超大国という共通項があり、欧州とアジアで似た地政学的ポジションにある。第2に日仏は競合関係にない補完し合えるパートナーシップ関係である。第3に最近の国際情勢の変化です。世界の勢力地図は、中国等の新興諸国成長の陰り、ユーロ危機による統合欧州内の団結の弛緩、日本の復活、などによって日仏2国関係の強化という座標軸が浮上してきた。第4には中国とドイツの接近が明らかになってきた、などの環境変化があると思います。
以前は、日本がフランスに憧れて……という形でしたが、磯村(尚徳)さんが「いまや、フランスが日本に片思いしている」とおっしゃるように、フランスが日本の文化や技術力を高く評価して、対等な付き合いができるようになりました。こうした事情を背景に、量的な部分だけでなく、多様性を重視した、新たな日仏関係を構築する時代になったと私は考えています。

坂下 具体的には、どんなことが行われているのでしょうか?

瀬藤 政治的には多角主義、日本の安保理入り、非核拡散原則、などありますが、日欧経済連携協定交渉、産業協力、第3国協力、企業同士の提携、産業クラスター交流。首都介在しない地方都市同士の連携“ローカル・トゥ・ローカル”、あるいは日仏間で生まれた子供の取扱いを決めたハーグ条約推進など多岐に渡ります。

足立 私が仕事をしていたリール商工会議所は、名古屋商工会議所と提携しています。都市だけでなく、“団体と団体”という結びつきも盛んですね。

瀬藤 足立さんはジャパンエキスポに行かれたそうですが、いかがでしたか?

足立 巨大な展示スペースで日本の映画やアニメなどが紹介され、フランスの若い人たちがたくさん詰めかけて、大変な賑わいを見せていました。コスプレを楽しんでいる人も多数見かけましたよ。

瀬藤 日本人が思っている以上に、フランスでは日本のカルチャーについての関心が高まっていますね。

坂下 日本の食文化に対する評価にも、さらなる高まりを感じています。パリの三ツ星レストランでも和食のエッセンスを取り入れた料理が出されていますし、私が師事しているワインの先生は、知り合いのシェフに「いま、日本では何が流行っているの?」と聞かれるので、それを調べてからフランスに出かけるそうです。

足立 文化面での交流をきっかけに、日本の若い世代が、もっとフランスに対する知識や理解を深めてくれるといいですね。私の仕事の分野で言えば、仏留学から帰国した学生の多くが、いつかフランス関係の仕事をしたいとか、フランスに関心をもつようになる、そういうことが将来の日仏経済関係につながるのだと思います。日仏の若い人材の交流を活発にするコーディネートを、しっかりやりたいと思います。