パリクラブ前会長 瀬藤澄彦氏にフランス共和国より国家功労勲章オフィシエが授与

この度 パリクラブ前会長の瀬藤澄彦氏にフランス共和国より国家功労勲章オフィシエが授与されました。
去る5月14日(火)、フランス大使公邸にて開催された叙勲式での瀬藤氏のスピーチを掲載いたします。
なお瀬藤氏の叙勲式の挨拶は全部、20分位、フランス語でなされました。フランス語挨拶の全文は本HPのフランス語版に掲載されております

 

瀬藤澄彦
フランス大使公邸
2019年5月14日


大使閣下、皆さま、こんにちは、ご本日はご多忙の中、ご参集頂き誠に有難うございます。札幌、大阪などからも来ていただきありがとうございます。フランスにいらっしゃる友人にはお呼びできなくて残念です。
まずローラン・ピック大使閣下に対して心よりの感謝の気持ちを申し上げます。
本日、この公邸にてこのような式典を行えることをこの上もない栄誉と誇りを感じる次第です。名誉と誇りという2つの言葉が浮かび上がってきますが、同時に重い責任を感じます。
東京とパリを行きかい約20年間は、私の人生そのものともいえるようになった。パリ、リヨン、アルジェー、モントリオール、私は東京本部に向かって言わば兵士のように働いていた。しかし3年間のあのパリ・ベルシー経済財政省の出向時代は、アメリ・ノートンの小説の通り全く違っていた。フランスで圧倒的人気を続けるベルギー人作家アメリ・ノートン(Amelie Nothomb)が小説「郷愁」(Nostalgie heureuse)のなかで幼少時代に暮らした日本をいつまでも自分の一部のように感じると告白しているようにパリ・ベルシーはわたしの精神構造に不可欠なアイデンティの一部のようなものを残してしまった。白水社の月刊誌ふらんすに「官僚たちの副都心、ベルシー」と題してその驚愕と震撼の思いを連載した。村上春樹の「浜辺のカフカ」のなかでいうように「いくつかの思い出は忘却のなかに埋没することを拒否する。どんなに時間が経過しても・・」。
その思いからフランス経済について本を昨年出版。「フランスはなぜショックに強いのか」です。内需主導型の経済モデルはドイツや中国の外需主導型の経済と異なり、不安定な輸出環境や外国の景気変動に従属しない、失業の輸出もなく国内の個人消費に支えられた自立的な経済です。
私はフランスのほとんどすべての地域、リール、アミアン、ストラスブール、ナンシー、ベルフォール、ランス、ルアーブル、カンペール、ナント、ボルドー、オッシュ、ディジョン、レンヌ、アジャシオ、日本経済の講演イベントを企画。磯村さんにはほとんどすべて講演会においでいただきました。リヨン、エクサンプロバンス、モンペリエ、カンヌ、ツールーズ、どんなに心強かったかことか。しかし日本がフランス国内でもっと理解を深めるには十分ではありません。なぜなら中国の友人たちはさらにフランスのいたるところでもっと活発に動いているからです。

4つの教訓と結論、
第1はフランスの経済学者アンリ・ファイヨールの言う組織の経営における戦略と執行の峻別です。エリートの影響力は日本よりフランスの方が遥かに強固です。企業統治ガバナンスの問われる日本。エリートの意味あいはレイモン・アロンがその本質的必然性を論じ、ピエール・ブルデューが鋭く分析している通りです。
第2は博愛の精神。アタリの本、人は他者を愛することをできるか。何も相手から見返りを期待しないで。ジャック・アタリがその著書『博愛 新しいユートピア』(Fraternité -la nouvelle utopie)のなかで発した21世紀の地球へのメッセージは、人類が他者に対する優越願望を捨て他者から見返りを期待しないで他者を愛することが可能となるような価値観に転換できなければ人類は未来に希望を持てないという内容であった。砂漠を彷徨する遊牧民のようにハイブリッドで雑種なパリこそそういう都市です。

第3は女性の地位を高めることが出生率を上げることになる。女が男のエゴに従属せず自立することをフランス女性の事例が物語っている。高い教育水準を持ちながら日本女性の労働人口に占める割合は恥ずかしいほど低い。ボボワール、バダンテールなど最先端の考え方に感銘。ミゾジンヌな女性蔑視の日本社会を終焉させなければならない。
第4はグローバル化のなかですべての経済活動が分散化する。政府と市場の間を取り持つ中間団体の重要性が一層高まる。インターフェイス共通領域、あるいは最近はやりのプラットフォームを形成することによって、スピルオーバー効果を得る。フランスは1901年法に基づき「アソシアシオン」という結社を制度化した歴史を持っている。公共空間の重要性はマクロンの親友でもあるドイツ哲学者、ユルゲン・ハーバマスの指摘するところ。
パリで始めたエコノミストの集まり日仏エコノミスト・フォーラムを、4月17日クリステエル・ペリドン公使のご出席賜り東京で発足させることができました。またピック大使と松浦第8代ユネスコ事務局長に名誉会長になって頂いたルネサンス・フランセーズ日本代表部も結成、この公邸で4人の方を表彰させていただきました。有難うございました。
人生は常に未完のプロセスで、それはまるでアルベール・カミュのシジポスの神話の通りです。企画調査し、目標を設定、行動に移す。これが私の人生哲学です。
皆様と一緒にさらに日仏関係の促進にまい進したい。
ご清聴有難うございました。
今宵はよきひと時をお過ごしください。