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【レポート】第5回日仏経済フォーラム 講演会「ポピュリズム時代の欧州政治―その課題と展望」

講演:吉田 徹 北海道大学教授/EHESS-FFJ/シノドス・ラボ
司会:瀬藤 澄彦

5月23~26日に行われた欧州議会選挙結果は、次の2つの特徴を際立たせた。第1は保革2大会派の共和派と社会党・極左が凋落するとともに断片化した。第2はリベラル派と欧州エコロジー派がそれぞれ現状維持と躍進を示すなか、反EUを掲げる極右政党が着実に票を伸ばしたことである。吉田教授は、こうした結果を踏まえて政治の流れは企業・市場経済重視派と労働者・成果再配分重視派の対立軸から、未来志向アイデンティ派対過去志向アイデンティティ派の対立軸に移行したと評価している。反EU欧州懐疑派を中心とする過去志向派はポピュリズムとされる政治勢力である。
吉田氏はさらにこのような新たな対立軸は、「リベラル/グローバル/個人vs.権威/ナショナル/共同体」、「閉じた社会vs開かれた社会」、「ポピュリズムvs.リベラリズム」、「グローバル化の勝者vsグローバル化の敗者」、「国際主義者 vs.国家主義者」(英Financial Times)、「進歩派vsナショナリスト」(マクロン)、「グローバル主義者vs愛国者」(ルペン)などが指摘されているとした。
この欧州議会選挙の会派別構成は次の半円図にまとめられる。これを見るとこれまでの2大会派が衰退した。しかし多数派の形成が会派の政治会派グループはいずれも困難になった。

一体、ポピュリズムとは何か。大衆迎合、バラマキ政治、扇動政治、反知性主義、がその特徴である。また、世界の6つの国のポピュリスト政党、すなわち、米国人民党、R.ペロー、ペロン、チャベス、ルペン、ベルルスコーニ、の共通項は次の4点である。①People中心の考え、②エリート批判、③peopleの一体性、④終末論的認識。またLiterature Reviewによると、対抗的イデオロギー、道徳的エリート批判、ニッチな政治市場としての政治的戦略の3種類が指摘される。

最後のまとめ及び展望については以下の見解が紹介された。

労働の奨励としての飢餓の恐怖と、懲罰の道具としての経済の鞭と、この両者に対して広範な反抗が起こったのは、ここようやく20年ばかりのことで、私たちはいま、正にこの成果の意義、そこから生まれる新しい問題の意義を知り始めているところです」(EH.カー 1951)

「振り返れば、1970年代以後の後期資本主義の危機の歴史は、資本主義と民主主義のあいだに介在するきわめて旧く、根本的な緊張関係の漸進的な拡大過程だった。言ってみればそれは、第二次世界大戦後に資本主義と民主主義を結び付けた強制結婚の段階的解消過程だった」(シュトレーク 2016)

「アメリカ以外ではほぼ普遍的だった経済的リベラリズムへの反対は、左派、右派、中道ともに異なる理由からだったが、無制限な多国間主義には反対だった。戦後の制度的な再構築の課題は(略)この2つの極の間を縫って、戦間期に広がった相互破壊の外的波及を避けて、国内を保護し、安定を実現することになった。これこそが『埋め込まれたリベラリズム』という妥協の本質だった。1930年代のような経済ナショナリズムではなく、それは多国間主義でなければならず、金本位制と自由貿易のようなリベラリズムが否定され、多国間主義は国内での介入によって防がれることになった」(ラギー 1982)

「日本の歴史上の民主主義は、すべて戦後民主主義であったと言っても言い過ぎではない」(三谷2016)

講演終了後、6人の出席者から質問が会議場からなされた。

以上

【開催済】第5回日仏経済フォーラム 講演会「ポピュリズム時代の欧州政治―その課題と展望」

Conférence « L’Europe, à l’heure du populisme ― ses enjeux et sa perspective »

混迷深まる欧州の政治経済情勢、ジレ・ジョーヌのデモ、欧州議会選挙結果、英国のEU離脱をめぐる国民投票の是非、イタリアなどポピュリスト政党の台頭、これらの動きの背景にあるのは何か。
北海道大学より吉田徹教授をお迎えし、民主主義の赤字と言われてきた欧州統合との関係などの意味を問いかけることをテーマに講演会を開催いたします。

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