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【レポート】セミナー「グローバル化するワイン市場とワイン法」

旧約聖書時代にまで遡るワインの歴史

グローバル化するワイン市場とワイン法

2月1日にBNPパリバ証券(グラントウキョウ ノースタワー42階)において、明治学院大学法学部教授の蛯原健介氏を講師にお招きし、「グローバル化するワイン市場とワイン法」というテーマでセミナーを開催しました。蛯原教授の専門は「ワイン法」。2005年にフランス・ラングドッグのモンペリエ大学に留学されたのを機に、本格的に研究を始められたそうです。同法について詳しく解説した著書『はじめてのワイン法』(虹有社)は、世界的に高い評価を受け、ワインの国際機関であるOIV(オー・アイ・ヴィ)から「OIV賞」を授与されました。学術書としては日本人で初の快挙であり、また日本ソムリエ協会の「名誉ソムリエ」就任も決まるなど、多方面でご活躍されています。
2018年4月からは同大法学部に新設される「グローバル法学科」に移籍し、選択必修科目となるワイン法科目を担当される予定。最低でも半年間の海外留学が必須という、まさにグローバルな学科であり、本場のワイン事情に精通した若手の育成にも力を注がれています。まずはワイン生産国の約8割が加盟しているOIV(2015年)のデータをもとに、ワイン市場の現状から勉強していきましょう。

ワイン輸出量ナンバーワンの国はどこだと思いますか? ワイン大国というイメージがあるフランスは第3位。1位スペイン、2位イタリア、4位オーストラリア、5位チリとなっており、日本で最も多く飲まれているのはチリワインなのだとか。高級ワインが多いフランスは、輸出額ではトップとなっています。一方、輸入量のランキングは、1位ドイツ、2位イギリス、3位アメリカ、4位フランス、5位中国。フランスが上位輸入国というのは意外な気がしますが、蛯原教授の「スペインから瓶詰めされていないワインが輸入され、フランス国内で瓶詰め商品になったうえ輸出されているため」との解説を聞いて納得です。
このように、ワインは多くの国境を越えて流通している非常にグローバルな商品といえます。だからこそ「ワイン法」が必要なのであり、ワインに関する国際間のさまざまな問題の解決を図り、グローバルスタンダードを構築するのが前出のOIVなのです。
蛯原教授は「トランプ大統領が“壁”を作ろうとしても、ワインのグローバル化はますます加速する」と話されていましたが、ワイン愛好者にとっては歓迎すべき流れですよね。

続いての話題は、古代から18世紀にかけての「ワイン市場」と「ワイン法」について。ワインの歴史は古く、なんと旧約聖書創世期の「ノアの方舟」にワインに関する記述がみられるそうです。大洪水のあと、ノアが最初に行ったことがブドウの栽培で、そのブドウからワインが造られたといわれています。また、方舟が辿り着いた地がワイン発祥地とされ、それは現在のグルジア(ジョージア)とアルバニア、カスピ海と黒海の間あたり。その後、ブドウは地中海方面へはワイン用、アジア方面へは食用として広まっていきました。
「ワイン法」については、「ハムラビ法典」「古代エジプト」「古代ギリシア」を起源とする説があります。「ハムラビ法典」では「酒を水で薄めてはならない」といった規定があったのですが、原料はブドウではなく、穀物酒だった可能性が高いとのこと。そして、あのツタンカーメンの墓からワインの壺が出土し、そこにはどこの畑のものか(産地)、誰が調合したものか(生産者)が記されていました。また、古代ギリシアではワインを格付けする動きが生まれ、そのための「ワイン法」が作られました。瓶も樽もない当時は、一般的に水で割って飲んでいたそうですが、どんな味だったのでしょうか。

「ワイン法」の目的は主に3つありました。ひとつは「生産調整」。ワインの生産が過剰になれば、当然、需給バランスは崩れてしまいます。価格の暴落を防ぐという資本主義の原理は、すでに根付いていたのですね。生産調整をめぐっては、こんなエピソードも。モンテスキューが自らブドウ畑を購入し、ワインづくりを試みたのですが、当局から栽培禁止令を出され、激しく抗議したものの、禁止令は覆りませんでした。モンテスキューですら例外ではなかったという点が驚きです。
2つめは「特権維持」。中世以来、ボルドーは、上流の産地よりも先に出荷できる特権を維持してきました。これはワインの世界に限らず、どの分野でもありそうな話ですが…。
3つめは「品質向上」。良質なワインを造るため、品質の劣る品種は引き抜かれ、優良品種の栽培が奨励されました。「特権維持」はともかく、「生産調整」と「品質向上」は現代のワインづくりにも通じる理にかなったものという印象を受けます。

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【開催済】EVENT PARIS CLUB 1 fevrier 2017 パリクラブセミナーご案内

2017年2月1日(水)18時30分~21時00分
セミナー「グローバル化するワイン市場とワイン法」

当初からワインはグローバルな商品であり、古代以来、多くのワインが国境を越えて取り引きされてきました。伝統的なワイン生産国であるフランスは、ワイン市場のグローバル化にどのように対処しているのでしょうか。また、日本では、世界各国のワインが流通していますが、その一方で、グローバルスタンダードを意識したワイン造りに取り組む生産者もあらわれています。日仏両国の最近の動きを紹介しながら、ワイン市場とワイン法のグローバル化について考えたいと思います。
参考文献:蛯原健介『はじめてのワイン法』(虹有社)

講師:蛯原健介:明治学院大学法学部教授(ワイン法)、国際ワイン法学会理事、日本ワインを愛する会理事、ブルゴーニュワイン騎士団シュバリエ

日仏経済交流会(パリクラブ)主催  在日フランス商工会議所(CCIFJ)共催

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