【レポート】「ブラッセルから見た欧州連合の内幕~その組織的実態と展望」開催

欧州連合への加盟申請、その実態とは

次は、「欧州連合の未来、拡大と進化」というテーマでお話いただきました。
「1957年に最初の加盟国が構成され、73年に第一次拡大し、英国が加盟しました。81年に民主化したギリシャも民主的な取り込みのために、加盟を受け入れました。また、冷戦の終結によって2004年には中欧、東欧諸国が加盟し、現在は、トルコなどが加盟申請を行っています。しかし、欧州連合の基本条約や法令、規則を守れるかどうか、それを欧州各国が判断して加盟を受け入れるため、加盟をするのはなかなか大変です」と加盟申請の歴史を紹介。
「リスボン条約までは、欧州連合に加盟したら脱退できませんでした。つまり脱退の手続きが決められていなかったのです。しかし条約の締結によって新展開となったのは、まず、2014年9月に行われたスコットランド独立投票です。もし独立したら、加盟国として存続するのか、あるいは加盟申請をやり直すべきかで議論がわかれました。次に、現在の英国首相キャメロン氏が公約した、欧州連合に残るかどうかを国民投票にかけるという点です。これは以前から英国が抱えている問題でありますが、ほかの欧州諸国からみれば、英国は片足を欧州連合、片足は英国というスタイルでいますから、どちらでも結構というスタンスです。三番目には、ギリシャのユーロ離脱問題です。法的にはユーログループから離脱しても欧州連合からは離脱できない、欧州連合から離脱しないとユーロから離脱できないという側面があり、こうした様々な問題を抱えています」と、報道されている事柄にも、別の切り口で言及されました。

日本でも指折りの通訳者と話し合いながら、内幕話をわかりやすく語るバサール氏。

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また、面白いのは、欧州連合の多言語主義です。欧州連合には加盟国が申請した言語をすべて公用語にするという規定があり、最新ではクロアチアがクロアチア語を公用語として申請しているようです。
これは、最初の規定のひとつに言葉の規定があり、欧州の民主主義の現れとして「母国語で申請し、母国語で回答」という原則があるそうです。
「現在、欧州連合には24もの公用語があり、欧州連合が決定する規定や指示は24の言葉に翻訳されるため、膨大な作業量となります。欧州議会も24の通訳がいて、母国語で議論をすることができます」と連合ならではの苦労も。欧州連合は、文化的な多様性を尊重することをテーゼにしており、コストがかかってもこうした取り組みを大切にしているとのことでした。
しかし合理的な側面もあるようで、「欧州委員会の作業部会では仏・英・伊語など7つの言語、外交・安全保障に関しては仏・英語のみで討議されます。また裁判所の審議は仏語のみ、判決は母国語で行われます。ちなみに欧州中央銀行は英語のみ」
加盟国28に対して、24の公用語というのは数が合いません。これは、たとえばルクセンブルグのように、ルクセンブルグ語はあるものの、公用語を仏語として申請している国があるためです。