イベントレポート 『欧州から見た日本のイメージ ~過去、現在、未来~フランスのアジア専門家の診断~』開催

自然災害と政治家が作る新しい日本のイメージ

7つ目の局面としてアベール氏が揚げたのが、日本を襲った未曽有の自然災害。阪神・淡路大震災、東日本大震災、福島の原発事故といった災害・事故など、数々の困難に対処する日本人の姿から、ヨーロッパにおける日本のイメージは、連帯感、不幸に立ち向かう底力、人間の尊厳といったポジティブな人間味にあふれるものに変化したと指摘します。

講演は、臼井久代さんによって同時通訳されました。

講演は、臼井久代さんによって同時通訳されました。

最後に揚げたのが、小泉純一郎、安部晋三という、新時代のカリスマ性ある二人の政治家の登場。この二人の政治家は、自分の言葉で自分の考えを語ることのできる強い政治家とヨーロッパでは見られており、そのイメージが浸透するとともに日本は勢いのある国という印象を持たれるように。そして日本経済への関心も高まり経済ミッションも多く来日するようになったといいます。

では、こうしたイメージは誰が主に作り上げていくのでしょうか。アベール氏は、イメージ作りに寄与する3種類の人々がいると指摘。つまり、日本で働くフランス人ビジネスマン、旅行者、マスメディアといった人々です。ビジネスマンは日本ではあまり成功する例が少ないためにネガティブなイメージを持つ場合が多く、旅行者は逆に日本好きの人々が多いために好印象を持ち、メディアはニュースや記事のネタとして一般受けしやすい日本社会の特異な部分ばかりをおおげさに伝えることが多いと説きます。また、最近では、これら3種の人々に加えて、日本のマンガ、ビデオなどの若者文化も影響を与えているそうです。

また、イメージは矛盾に満ちていることも事実で、一度人の心や頭に植えつけられたイメージを変えることは巨額のお金を使っても不可能だともアベール氏は話します。例えば、福島の原発事故が起こる前にフランスでは日本航空による来日キャンペーンが大々的に行われていましたが、事故の報道によって『日本は怖い』というイメージが植え付けられ、それはなかなか消え去ることができなかったそうです。アベール氏は、他者から良いイメージを持たれることは重要であるかどうか、という点についても言及。氏は、ロシアのプーチン大統領の例を揚げ、ヨーロッパではロシアのイメージは決して良いものではないけれど、プーチン大統領自身が外国の人々からどうすれば尊敬されるかということを常に考えていると指摘。たとえネガティブなイメージを持たれているとしても、リスペクトされているかどうかという点も一つの視点になると話します。

そして、国のイメージを考える際、最も重要なことは、自分自身でどう見ているか、自身の国に自信があるかどうかという点であると力説。最近の安部首相の発言は、日本人が自信を取り戻すことに寄与しているように見受けられ、それが日本は勢いのある国というイメージに結びついていると分析自分たちが自信を持つことが非常に大切で、世界においてより良いイメージ作りに役立つと話し、講演を締めくくりました。